弁の手術には大動脈弁手術と僧帽弁手術がメジャーです。大動脈弁手術について今回は書きます。
大動脈弁というものが心臓の出口にあります。心臓は伸びたり縮んだりして、ポンプの役割をはたしているのですが、ただ伸びたり縮んだりしているだけでは効率よく血液つまりは栄養をカラダにおくれません。一方向に血液のながれを流す必要があります。そのために、逆流防止弁が心臓にはあります。合計4つあり、そのうち一番出口側にあるものが大動脈弁です。
大動脈弁の病気は2種類あります。詰まり気味、狭くなる病気と、弁が不調をおこして、逆流をおこす場合があります。弁が狭くなる病気を大動脈弁狭窄症といい、不調をおこす病気を大動脈弁閉鎖不全症といいます。
狭窄症の場合は弁自体いたんでいることが多いのでとりかえる必要があります。弁は機械弁と生体弁というものがあります。機械弁はカーボンでできており、長持ちする一方、からだが異物としてみます。血液がかたまって、弁にくっついて、弁の調子がわるくなったり、血液の塊がからだのあちこちにとんだりします。なので、血液をサラサラにする薬を一生のみつづけなくてはなりません。
生体弁は一方、個人差がありますが、15年から20年ほどもつものの、それ以降はとりかえなくてはなりません。2回目の手術が必要となりそこそこにやっかいですが、最近はカテーテルで治療する選択肢も出てきました。サイズによるので、主治医の先生にきいてみるのがよいとおもいます。さらに5年10年もすとすれば、結構ながくもつので、個人的には65歳くらいを最近では基準に生体弁をおすすめしています。もうひとつだいじなことは、若い人が生体弁をうえこまれるとそこまで長持ちはしないことがわかっています。50歳くらいのひとには生体弁はどんな事情であれ、あまり好ましくないかもしれません。
カテーテル治療を前回書きました。血管のなかから治療するので、回復は劇的にはやいです。カナダでは日帰り手術をするところもあるようです。ただ、やはり耐久性に難があるかもしれません。
逆流している場合は自分の弁を温存して修繕できます。わたしはこのトレーニングをうけましたが、日本では本当に一部の先生しかやっていませんが、いい手術だとおもいます。
一方で自分の心膜を使う手術もありますが、耐久性をたかめる処理があまりできないので、長期成績に疑問がのこるところです。ウシの心膜がつかえるので、自分の心膜はよりよいはずですが。。。まだよくわかっていないところが多いところだとおもわれます。そして、2回目の手術が大変になるのは外科医は想像できるところです。これをやるかどうかは外科医しだいだとおもわれます。
低侵襲の手術は大きく3種類あります。骨をすこしだけ切るもの、骨をきらず、胸の前から手術するもの、さらに脇の下あたりから手術するものがあります。私は前者2種類をおこなっています。理由はほぼ通常手術と同様におこなうので安全であること、見た目以外はあまり痛みなどに差がないことです。
大動脈弁は多くの病院で低侵襲治療をおこなっていますので、ひとつの病院で納得できなければ、ほかの病院にかかるのもよいかもしれませんね。