一般の印象とはちがって外科医になることとお金はあまりむすびつきがありません。世間一般では”外科医っていっぱいお金をもらっているにちがいない”とおもっているでしょうが、実際は他の科の先生と給与がおなじにくわえ、日中は手術、夜は術後管理と忙しく、時間がないうえに、バイトの幅がせまく、給与としてはふるいません。生涯年収をかんがえるならば選んではいけない科とおもいます。これをみているひとが一般のひとならば、医師の求人広告をみてみてください。外科、求人と検索するとでてきますし、内科 求人として比較すると給与のちがいがないことがわかるとおもいます。眼科なんかがもっとも給与がいいとおもいます。
外科医のキャリアをかんがえてみると、一般病院でずっとすごす場合は自分で決めた病院ではたらくかわりに、多くの外科医とはたらく機会が医局に所属する場合にくらべすくなく、一部の大病院をのぞいて、応用がききにくいことがあります。またあまり珍しい病気に多く触れることがないので、ふつうにある多い手術になれることはありますが、特定の凝った手術にふれる機会はすくないかもしれません。医局に所属すると今度は自分でのキャリアのコントロールが難しくなり、自分で病院をえらべるということはあまりないかもしれません。そのかわりいろいろな病院ではたらくので、いろいろなやり方にふれることができ、はばはひろがるかもしれません。しかし、運がわるいと、あまりいけていない病院にまわることになり、外科医としての成長がうまくいかない可能性もあります。また教授に自分の首輪をあずけている状態なので、なんとなく自分で人生をコントロールできている感じはないでしょう。
お金の面でいうと一般病院に就職がずっと安定します。おなじところではたらくことが多いとおもいますので、そこそこ高い給与で安定しますし、年金の心配もありません。大学病院のように安月給ではたらいたり、大学院生として逆にお金をはらってはたらいたりということはありません。医局にいると毎年のように異動もありますから、引越し代もばかにはなりません。そのたびに敷金礼金をはらいなどしていますから、一般のひとには給与が高いようにみえても実際はそこから毎年の引越し料をみて、大学院にはいったり、留学したりする資金をみるとふつうに会社にはいったほうがよっぽど儲かることがわかります。ちなみに会社とちがって引越し代はでませんし、諸経費は自分もちです。留学のときは無給のひともすくなくなく、そこから年金などはらうと貯金を切り崩してなんとか生活をしていくという感じです。医局にはいったときのよさは医局のもっているポジションに最終的におちつくことができることです。
生涯年収としては一般病院ではたらくほうが高いのではないでしょうか。よほどのことがなければ、クビにするのも難しいわけですし。キャリアアップのチャンスとしては医局にはいったほうが高いかもしれません。結局なにをもとめるのか、最終的にどうなりたいのかに落ち着くのではないでしょうか。心臓外科では一方で一部の専門病院が大学病院よりも専門化された手術をおこなったりしているのでこの限りではありません。わたし自身は大学病院に所属していましたし、それが振り返ってもよかったとおもっています。
やりがいを求めて外科医になる方がおおいとおもいます。実際自分で手術した患者さんがよくなると達成感と手術のたのしみ、手術室での成長なんかがあり、外科医というのは本当にやりがいのある仕事だとおもいます。だからこそ、給与が安くてもずっと人気はたもっていますし、やっていけるのだとおもいます。
ただ、お金というのは小さい問題ではありません。清貧ではパートナーやこどもはハッピーにならないかもしれませんし、お金をもっていないと享受できないチャンスというのもあります。何がいいかはわかりません。今後新しいかたちの外科医人生というものを模索していきたいものです。医局がアメリカのプライベートプラクティスモデルとして動くのが実際いいとおもいますが、これについてはまた今度述べたいとおもいます。