日本のほとんどの中核病院は公立で、アメリカのほとんどの病院は私立病院である。私立病院と書くと、お金を求める悪徳と感じるかもしれないが、私立は私立でよいところがあることを書こう。
日本で働いていたとき、すべての病院が準公的か公的な病院だった。私立と名乗っていても官公庁の下に存在する病院は多数あった。私立は資本主義で成り立っていて、公的機関は社会主義で成り立つ印象があった。
どういうことかというと、準公的機関ではたらいたとき、まず、給料はほぼ一律同じである。教授から専修医の給料の差は1.2倍程度だった。つまり、これはポジションは名誉のためにあり、実には影響しないということになる。また、どれだけ働こうが、残業代はでないし、給料はどこの科もどのポジションも一通りだった。働けばはたらくほど損をする仕組みだ。結果として、安全の観点から、忙しいことは悪となっていた。手術はいつも2.3ヶ月待ち、そのあいだの検査なども1ヶ月またないと来ない。とったCTの結果も何日かたたないとでないというかんじだった。
なにが問題かおわかりだろうか。患者さんの利益がかなり少ないのだ。待つ時間が長いことや、検査ができないこと、結果がでないことはいずれも患者さんのメリットではない。給与一律なので、医師も、看護師さんも情熱以外のモチベーションはわかない。技術をたかめるかどうかは単純にやる気だけの、問題なのだ。やる気をだして昇進してもそこには名誉しかないのだ。
私立病院ではどうなるか。患者さんの検査を多くこなしたいので、できるだけ、そこにリソースを注ぐ。患者さんを待たせない努力をするだろう。さらに、より高いレベルや、多い時間働いたひとや、利益を出す科にお金を出すだろう。つまりは利益の最大化が患者さんのメリットの最大化につながるのだ。
つまり、正当に金儲けをする病院は効率化をすすめ、医療の改善がすすめられるだろう。いろいろ意見があるだろうが、私は医療の資本主義化にそういう意味では大賛成であるといいたい。それが患者さんの医療の改善につながるはずだから。